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あなたのそばに3
私って、やっぱり、柏崎のことが好きなんだな。なんでだか知らないけど、こいつと一緒にいると、冗談でもなんでもなく、胸が熱くなる。
熱いというよりも、温かくなる。
気持ちが落ち着くというか・・・・・・・・そいつのそばにいると、なんだか物凄くほっとして、素直に、ありのままの自分を表現することが出来ていた。
背伸びなど必要のない、ありのままの自分でも、そのまま、何の蟠りもなく受け入れてくれ、接してくれるそいつが、益々好きになっていた。
久し振りに、生き生きとした表情で会話を楽しんでいる自分がいることが理解できた。
仕事が楽しくないと言う訳ではないのだけれど、どうしても行動範囲が狭まれてしまうから、どこか閉鎖的な部分が出来始めていたのかも知れない。
だから、柏崎との出会いは、私にとっては物凄く新鮮で、居心地の良いものに思えてならなかった。
食事も終えて、ひと息つきながらも、私達の会話が途切れることはなくて、気がついたら、時計が夜の9時を過ぎていた。
「え、うっそ、もうこんな時間??」
店内に設置されている時計の指し示している時間に、私は目を丸くしていた。
「そうだな、そろそろ帰らねえとヤバイな、親父さん、心配してるだろうし。」
「え、そんなことないよ。」
そんな会話を交わしながら、伝票を持って立ち上がろうとしている柏崎から遅れないように、私も慌てて立ち上がるとその後に続いていた。
お会計は、もちろん、割り勘にした。
柏崎は払ってくれようとしていたのだけれど、私が強引に支払っていた。
「お前、普段はおとなしいくせに、結構押し強いんだな。」
車に乗った柏崎が、シートベルトを締めながらそんなことを言ってきた。
その口元には、ほのかに笑みが浮かんでいたから、怒っていたとか、嫌味から言われた訳ではないとは思うのだけれど、なんとなく気になって私は肩をすくめながら、彼に対して「ごめん」と返していた。
「なんで謝るんだよ。」
「なんとなく。」
直ぐに言葉を返したら、豪快に笑い飛ばされていた。
「お前、おもしれえ。」
クスリとまた笑みを漏らした後で、そいつはその視線を真面目なものに変えると、再び車を発進させていた。
今度は、私の家に帰る為に。
・・・・・・・・・・・・・・。
帰りの車内が、こんなに苦痛に感じるとは思いもしなかった。
車で移動をしたのなら、ファミレスから私の家までは、5分とかからなかった。
あ~・・・・・・・・こんなことなら、ファミレスの代金、強引に割り勘になんてするんじゃなかった。
そうすれば「今日はありがとう、ご馳走さま、今度は私が奢るから、良かったらまた一緒に食べようか?!」って、感じに切り出せたかも知れないのに・・・・・・・・
もう、私の馬鹿!!
って、心の中で思い切り良く自己嫌悪。
知らず知らずのうちにも、私の首が元気を失って、いつのまにか大きく項垂れていたみたいだった。
「おい、着いたぞ、お前の家・・・・・・・・・・だけど・・・」
私がひとり、勝手に落ち込んでいる最中も、車は容赦なく移動を続けていて、私はそんな柏崎の声にはっと我に返っていた。
柏崎に言われてみて顔を上げると、車はいつの間にか見慣れた我が家の駐車スペースの中に停車されていた。
で、隣の運転席にいるそいつが、なんだか困ったようにして私の家の様子を伺っていた。
「なんか、お前んち、誰も居ねえみてえなんだけど・・家、明かりがついてないみたいだぞ。」
「へ??うっそ?!」
柏崎の言葉に驚いて、私も自分の家を見上げてしまう。
その際に、彼に急接近している自分がいたことを知ったのは、ひと呼吸ほど遅れてからのことで・・慌てて一瞬重なった視線を外すと、浮かせた状態になっていた自分の腰をシッカリと座席のシートの上へと下ろしていた。
確かに、柏崎の言う通り車を降りてから改めて確認して分かったのだけれど、家には誰の気配も感じられなかった。
こんな時間なのに、家の中が真っ暗。
「ほんとだ、やだなあ、どうしよう、私、家の鍵持たないで出てきちゃったよ。」
困り顔で真っ暗な我が家を見上げていると、こちらを見てきた柏崎とその視線が重なっていた。
少しだけ、そのまま沈黙が流れた。
「親父さんに、連絡はとれないのか?携帯とか・・・」
「・・・・・・うん、それが・・・・・・繋がらない。」
「はあ?!なんで??」
はは・・それは・・・多分・・・・・・・・・・・
柏崎のその言葉に対して私は直接答えることはなかった。
答えなかった代わりに、少し呆れたような表情で私がその視線を外すと、柏崎はその意味をなんとなく理解したみたいだった。
「なるほどね、お前んちの両親、仲が良いんだな。」
なんて、笑顔で言われてしまう。
はは、うちの両親、私がいないのを良いことに、パートから帰ってきた母と二人っきりの時間を満喫しているみたい・・だ。