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泡沫11
いつもとは違う、真剣な光を伴った彼のその眼差しに、思わず吸い込まれそうになる錯覚を覚えた。彼のその瞳の美しさに、暫しの間私は見惚れるかのようにしてただ、黙ったまま見つめ続けている。
「・・・・・・・・・・なあに柄にもなくド・緊張してやがんだよ、希咲。
顔、強張ってんぞ。」
そう言いながら先輩、なんで私の耳を摘むのか・・・・・・・・・・
「先輩~・・・・・・・・・・・・・・」
私が眉をひそめながら苦言を申し立てると、彼はとても愉快そうにして声をたてて笑い続けていた。
「お前はそうして全身でいろんな感情を表現している時の顔が一番可愛いな♪♪」
なんて、サラリと言いながら私の耳元にまで持ってきたその唇で「な、希咲。」って甘く(?!)囁いてくる。
そんなこと、今までされたことなんてないから、自分でも分かるくらいに全身がカッカとした熱を伴って一瞬のうちに真っ赤になっていくのが良く分かった。
おまけに、冷や汗なのかなんなのか、訳の分からない汗が額からじとお~・・・・・・って感じに滲んできて、とてもではないけれど、色っぽさの欠片もないような反応しか出来ない自分が、なんだか女として物凄く恥ずかしいというか、残念な気がしてならなかった。
こういう時、恋愛に長けている女の子はどんな風にして自分を表現するのだろう?!
今まで恋愛とは程遠い位置にいた自分には想像もつかないような出来事が、目の前にあるということに改めて気が付いて、私自身の存在が場違いというか、間違っているようなおかしな気持ちにもなってきた。
「どうした、希咲、元気がないぞ。」
そんな私の不安を察しているのかどうかは分からないけれど、先輩がその口元に軽く笑みを溢すとそれで私の肌を撫で上げていた。
「いれるぞ、希咲、いいな??」
唇で私の肌を撫で上げ、前髪をかき上げた後で私のおでこにたっぷりと唇を添えてきた先輩が、改めて私に確認をしてきた。
「・・・・・・・・・・・・・う、うん・・・・・・・・」
私の唇からは少し上ずった声が漏れてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
先輩は、そんな私の顔を今度は少し穏やかな表情で見下ろしていた。
さっきは怖いくらいに真剣な眼差しをしていたのだけれど、今度の先輩のその瞳を見ているとなんだか暖かな感情が胸の奥底から込み上げてきているのが感じられた。
ふわりとした温かさと柔らかさに包み込まれて、幸せたっぷりというか、なんだか良く分からないような安堵感というか、なんだろ??
これが、愛おしさ・・・・・・・っていうもの・・なの・・・か・な?????
良くは分からないのだけれど、兎に角、なんだか分からないほんわかとした気持ちに包み込まれてしまっていて、気が付いたら私は先輩とたっぷりと深いキスを繰り返していた。
それまで優しい光を湛えていた先輩の目が、少し真剣な眼差しに変わったのは先輩がその唇を離して私の髪をかき上げながらゆったりとおでこや頬をその手の平に包み込んでくれた後のことだった。
「希咲、人によっては例えはじめてでも痛くないこともあるそうだ。」
「え?!ほんと??」
その手の動きを止めて、私の頬に添えたままになっている手の指先で頬のラインをなぞりながら告げてきた先輩のその言葉に、私は場違いなほどに大きな声を発すると目を丸くしていた。
「だからといって、お前がそうとは限らねえが・・・・・・・・・安心しろ、どうしても嫌ってえんなら、俺はやらねえから。」
「・・・・・・・・・・・う、うん。」
続く先輩の言葉に、私はぎこちなく頷くのが精一杯だった。
「希咲、いれても構わないんだな??」
先輩が念を押すかのようにして聞いてくる。
「うん・・・・・・・・大丈夫・・だと、思う。」
だって・・・・・・はじめてだから、どうなるかなんて分からないよ。
そんな心の不安を飲み込みながら、私の視線が彼の顔を捉えることを止めていた。
なんか、先輩の顔をまともに見ることが出来なくなってきた。
嫌な訳ではない。
嫌ではないけれど・・・・・・・・・
やっぱり不安。
「希咲、力、抜きな・・・・・・・・・・・」
私が胸中に不安を抱え込み、悩んでいるその時そう告げてきた先輩の両手が、私の両足を押し開いていた。