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気まぐれ仔猫Ⅱ・17

・・・・・・・・・笠原が、携帯の向こうから私の名前を口にしたところまでは覚えている。



椿・・・・・・・・

って、彼が私の名を呼んできた。



私はそれに何とかして返事を返そうとしたのだけれど、声が出なかった。


で、なんでだかは分からないのだけれど、笠原の声を聞いたと同時に、それまで無理矢理にっ・・ていうか、自分でも無意識のうちに押し込めていた沢山の思いがあったみたいで、それらが一気に私の頭の中で爆発しちゃったみたいだった。

で、グルグルって感じに急に物凄い眩暈に襲われて、で・・・・・・・・・・








気がついたら、私はシンプルなベッドの上で横になっていた。


どこかの、ホテルの一室みたいな・・・・・・

私が寝ていたベッドの横に、少し距離をおいてもうひとつ同じベッドが置かれている。


「・・・・・・・・・・・・・りゅうちゃん??」

そのベッドの反対側の淵に、私に背中を向けた状態で腰を下ろしていたその背中は、間違いなく、彼のものだった。


「私、どうしたの?!」

「・・・・・・・・・・・。」


私が言葉を発するその時まで、彼は携帯で誰かと話をしているみたいだった。

だけど、私が目を開いて彼のことを見ていることに気がつくと、その話を打ち切って携帯の通話を終了させていた。


「どうしたもねえだろ馬鹿、いきなりぶっ倒れやがったんだよ、お前は。」


うっ・・・・・・・・・・・・・

まさかとは思ったけど、私、やっぱり倒れちゃっていたんだ。



「たく、驚かせやがって、お前は。」



りゅうちゃんが少し呆れたようにして、吐息をひとつ吐き出していた。

そして、そのままベッドを一気に乗り越えると、私の目の前にまでやってきて、わしゃわしゃわしゃと私の頭を少し乱暴に撫でてくる。


「ん、ごめん、りゅうちゃん。」


彼に頭を撫でられて、少し照れくさいというか、くすぐったいような気持のままに、首を竦めながら、彼に向って謝罪の言葉を向けていた。


「・・・・・・・・別にいいけどな、海里、メシ食うか??」

「ごはん??」

「おう、さっきルームサービスで頼んでおいたんだが・・・」

「りゅうちゃんは?!」

「まだ食ってねえよ。」

「じゃ、一緒がいい。」


私のその言葉に、彼は少し噴き出しながらその口元に笑みを浮かべていた。


「分かったよ、お前、起きれるか??」

「うん。」


彼に言われてその体を動かしてみると、なんとなく大丈夫そうな気がしたんで、そのまま一気に上半身を起こしていた。

うん、大丈夫。

ちょっとクラッ・・・・・ってなったような気がするけど、それはひょっとしたらお腹が空きすぎているせいなのかも知れないし。


「歩けるか??」

ゆっくりと歩き出した彼の後を追いながら、私はその言葉にひとつ頷きを返していた。

うん、大丈夫・・・・・・・・


「ごめんね、りゅうちゃん、私、いきなり倒れちゃったりとかしたから、大変だったでしょう??」

「・・・・・・・・・まあな。」


小さなテーブルを挟んで食事をしながら、彼にそう話し掛けると、少し間を置いて彼が返事を返してくる。


「海里、今日はあまり出歩かないほうがいいかもな。」

「うん、そうだね、このままここに一泊とかって出来るのかな?!」

「あ~、出来るぞ。」

「そうか、じゃあ、ここで一泊してゆっくりしてから明日、家に帰ることにする。」

「そうだな。」


なんて会話をしながら、私達は随分と遅い昼食を食べていた。

うん、美味しい。

美味しいって感じることが出来るうちは、元気が残っている証拠、ってえことにしておこう。


「海里、食べ終わったらまたベッドで休んでおけ、俺はその間、やっておきたいことがある。」

「うん、分かった。」


彼の言葉にそう答えて、昼食を食べ終えてから、そのまま少しだけ話をして、で、それからベッドに入ってまた寝てた。

他愛も無い会話を終えた後、ゆったりとベッドの中に潜り込むと、私はまたいつの間にか深い眠りに就いていた。

今日は何度も何度も昼間から寝ているのに、それでも、深い眠りに就くことができていた。

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