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気まぐれ仔猫Ⅱ・8

少し彼から離れた位置で、彼の電話が終わるのを待っている最中、私は眼下に拡がる景色を堪能していた。


「あ~・・・・・・・・そうだな、分かった。」



短い言葉を残して、電話を終えた彼が自分の携帯をパタリと閉じていた。

私はそんな彼の仕草を窓の外の景色を眺める視界のその端に留めながら、心地の良い空気を胸いっぱいに味わっていた。





「海里、体の方はどうだった??」

「うん、出血とかはなかったけど、やっぱりまだヒリヒリするような気がする。

あと、胸に残ってた指の痕とかも随分と薄くなってたよ、他は・・・・・・・・うん、その、残っちゃっているんだけど・・・」



私が少し残念に思ったのはそこだった。

私の首筋と、胸の丸味の一部には、点々と赤い痕跡がいくつか残されたままだった。


「ま、あ、仕方なかろう、それは後でお前の肌の色に合わせたファンデーションでも塗って誤魔化すしかねえ。」

「うん、そうだね。」


って、感じに彼に向かって頷いたとき、それまでその場にどっかといった感じにして座っていた彼が、すっと立ち上がっていた。


「?!」

どうしたのだろう??と思って私が首を捻りながら彼のことを見ていると、彼は無言のままツカツカツカと足早に私の方へと寄って来た。


そして、その彼が私の方へとその長い腕を伸ばしてきて、私の体を自分の胸の中へと引き寄せると、その体を強く抱き締めてくれていた。


強く、って言っても、彼が本気で強く力を入れたりしたら、私の体は大変なことになってしまうのだろうけれど、その時の抱擁は、私にとっては物凄く心地が良かった。


今、彼とこうしてゆったりとした気分のまま触れ合うことが出来ているなんて、さっきまでのことを考えたのなら、本当に夢のようなことだった。


「りゅうちゃん、お願いがあるの。」


私が彼の胸の中で抱き締められた状態のままゆっくりと言葉を吐き出すと彼が「なんだ」と答えてく来てくれた。

だから、私はその顔を上げると彼のその顔を見上げてその口を静かに開いていた。


「あのね、りゅうちゃん・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・。」

私が言い掛けたところで彼の手の平が私の頬に触れてきて、優しく撫で上げてきていた。


そして、そのまま優しいキスを重ねて、それからまた、その体を抱き締めてもらっていた。


「りゅうちゃん、私、りゅうちゃんに触れてもらいたいの。」

「あ??」


私の言葉に、彼の言葉が空かさず反応を返してくる。


「あのね、私の肌に・・・・・・・・・・・触れて・・・欲しい・・の。」


なんて、なあ~んて恥ずかしいことを言っているのかな?!

って思いながらも、めっちゃくちゃドキドキしながら彼に訴えている最中、私の体がその奥から一気に熱を増してきて、その頬が物凄く熱くなってきていた。


「・・・・・・・・・りゅうちゃん・・・・・・・・・」

改めて、言い掛けた時、彼がその唇で頬に触れてきて・・・・・・・・・


「何まっ赤に染めてんだよ、唇で触れてもお前の肌・・・熱いぞ。」

って優しく微笑みながら言われてしまう。


今日のりゅうちゃんは、私の気持ちを気遣ってくれているのか、優しい笑みを沢山見せてくれている。


「・・・・・・・・・・・・・。」

そんな彼の笑顔に思わず見惚れてしまっていると、今度はその唇で優しく私の唇を塞いできた。


暫くの間、そうしてお互いのそれを重ね合っただけのまま、私達は窓の外から漏れ聞こえてくる潮騒の音だけがゆっくりと辺りに広がり、少しだけ開かれた状態の窓からは優しい潮風がカーテンを静かに撫で上げていた。


「中にはいれねえぞ。」


彼のそんな言葉を合図に、私達はその肌を触れ合わせはじめることとなった。

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