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年下の彼21

軽く触れ合っていた唇を離すと、私のその目の前には、嬉しそうにして笑みを漏らしている彼の顔があった。


「・・・・・・・・はあ、こんな時、奈々深、めっちゃいい顔してるんだろうなあ~・・・・・・・・・・・」



ふう~・・・・・・・・・・・・・・・

そんなことを言いながら、彼が大きなため息を吐き出すと、その顔を私の胸の谷間に埋めていた。





「奈々深、思い切って、俺と結婚とか、しちゃう??」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」


はい???

悠一くん、今、なんて・・・・・・・・・・


「奈々深、ね、聞いてる??あのさ、俺、今、プロポーズ、したんだけど・・・・・・・」

「・・・・・・・・・って、この状況で?!」


私が彼の下になったまま、その顔を見上げながら聞くと、彼は少し考えた後で、ニコリとその口元に笑みを漏らしていた。


「うん、そう、この状況だけど・・・・・・・だめ??」

「だめ・・・・・・・・ではないと思うけど・・・どうしたの?!急に・・・」

「別に、急ではないけど・・・・・・ずっと考えていたことなんだし、俺、正直もう待ってられないし・・・」


持っていられない。

それは、本来私が言う言葉、なのでは・・・・・・・・??


私が呆然としていると、彼はその顔を私の方に向けてきて、少し真顔で私の顔を見下ろしてきた。


「だってさ、これ以上、奈々深のこと、俺、待たせたくないし・・・・・・・・・今の俺じゃ、やっぱり結婚とか考えるには、奈々深からしたら、無理がある??」

「う、ううん、そんなこと、ないよ、今の悠一くんなら、大丈夫だと思う、だからこそ、こういう風になってもいいかな?!

って、そう、思えたから、だから、その、と、突然ではあったけど・・・・・・い、一緒に・・お風呂・・・って発言が出てきた訳だし・・・・・・・・・」

私がそこまで言ったところで、その頬を真っ赤にしながら視線を反らすと、彼はなんだか愉快そうにして笑い声を上げていた。


「奈々深の「一緒にお風呂」発言、俺、正直ビックリしたけど、嬉しくもあったりするからあれなんだけど、奈々深も、思い切ったこというなあ~・・・・・・・・・とは思った。」

「・・・・・・・・・・・・・・じ、自分で言っておいて、後になって物凄い発言だったなって思ったけど、でも、私ももう27・・・・・・・なんだよね。」

「そうだね。」


私が自分の年齢を口にして、その目線を下げると、彼が少しだけ悲しそうにして見ていたような気がした。

そして、その手を伸ばしてきて、俯いている私の頬を撫でてきた。


「お互いの年齢を変えることはできないけど、こうして一緒にいることはできるよ、奈々深。」


そう言って、彼は私に向って極上の笑みを浮かべてくれていた。

「うん、そう・・・・・・・・だよね。」

そんな彼の顔を見上げていたら、思わず涙が零れ落ちそうになっていたけど、それを我慢して頷くと、彼のその胸の中に顔を埋めていた。


彼は、そんな私の体をぎゅっと目一杯優しく、でも、力強く抱きしめてくれて、それで・・・・・・・

その手の平が、私の頭を軽く撫でていた。


「・・・・・・・・・・・・・・。」

頭を撫でられるなんて、思いも寄らなかった。

でも、その優しい彼の手のひらが、とっても愛しく思えてならなかった。


彼が、どんな思いでそうして私に触れてくるのか、その全てを知ることなんて出来はしないけれど、それでも良かった。


彼の優しさに甘えることが許されるのなら・・・・・・・・・・・・


彼の胸の中で、その頭をゆったりと撫でてもらっていると、物凄く穏やかな気持ちになってくる。

それまで、密かに案じ続けていたことも、悩んでいたことも、全てが霧散して、どこかに消えてしまったかのようだった。


彼が、傍にいてくれて、こうして優しく触れてくれる時間が持てれば、それで良かった。


でも、それでも・・・・・・・・・・その先に進めるのであるのなら、進みたい。


そう、思っていたのも事実だった。

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