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真昼の月1

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


薄ぼんやりと目を開いた時、そこに見えた人影に、俺は眩暈を覚えた。


よりにもよって、こいつのところに置き去りにされるとは・・・・・・・・・



覚醒していく自身の意識の中で、俺は出来ることなら、このまま何処かに消え去りたいような衝動に駆られていた。




「あ、匠、目、覚めた??」


そう言いながら俺の顔を覗き込んでくるその瞳は大きい。

背を流れる髪は長く、細い。

それが、奴の僅かな動きに合わせてサラサラと流れている。


色は薄めの・・・・・・・・・・・何色だ??

まあ、いいや・・・・・・・・・・

流石、双子ともなると全く同じ顔つきをしていやがる。


俺が寝転んでいる大きなベッドの淵に寝そべるようにして身を寄せ、体を突っ伏した状態でこちらを見ているその顔は、瑠依と同じだった。

だが・・・・・・・・・


「匠、何か食べる?!」


俺が目を開き、その存在を確認していることを知ったそいつは早々にその身を持ち上げると、サラリとした表情で俺に話し掛けてくる。


「あ、因みに「かわいい姉ちゃん」なんて言ったら、速攻でぶん殴るから。」

立ち上がりながら、奴はそんなことを言ってくる。


「誰も言っていねえぞ、そんなこと。」

横にしていた体を起こし、不機嫌そうにして奴を睨みつけてやる。


「へえ、そう?!じゃ、何か食べる??普通に・・・・・・食事。」

「・・・・・・・・・・・・・あ~・・・・・・・・」

例え、きつい視線で睨まれようとも動じることの無いそいつは、特にこれといった反応をすることもなく、話を進めてくる。


まあ、確かに、腹が減っていることは事実でもあるし・・・・・・・俺は、その視線を奴からずらすと、しぶしぶながらも返事を返していた。


「あ~・・・・・そうだ、匠、立ち上がる前にキチンと服、着た方が良いよ、なんだかあんたを連れてきた怖い系のお兄さんが、楽しそうにしてあんたの着てた服全部脱がしていたから。」


「・・・・・・・・・・・って、ちょっと待て!!じゃ、俺はこのまま(全裸)なのか?!」


奴の言葉にはっとして確認してみれば、確かに全身がすうすう・・・・・・・・・何も着ていねえじゃねえか。


「あ、大丈夫、それならもう準備できてるから・・・・・・・・はい、匠の仕事着。」

そう言って彼女が差し出したそれは紛れも無く・・・・・・・


「あんた、今日から私の専属ね。」

奴・・・・・・いや、彼女が俺に手渡したそれは篝家専属の執事達が着ている専用のユニフォームだった。


「冗談じゃねえぞ。」

「まったくだわ。」


俺が早速文句を言えば、彼女は彼女で溜息吐きながら速攻で返してくる。


「私としてもねえ、専属をつけられるのって、嫌なのよね、面倒だし、そんなの、頼まなくてもひとりで出来るし・・・・・・・・

全く、何考えているのかなあ??うちの親父様。」


俺に服を手渡し終えた奴は、さっさと俺の元を離れて流しの前に立つと、何やら準備を開始していた。


「匠、あなた、特に好き嫌いはなかったよね。」

「ん??あ~・・・・・・・・・」


そのまま全裸という訳にも行かないんで、奴がその視線を反らしている間に上掛けのシーツを取り去り、一気にそれらを着込みながら返事を返していた。

ちっくしょう、下着まで新品かよ、しかもブリーフ・・・・・・・・冗談じゃねえ、後で自分好みのもん、買ってくるか。


・・・・・・・・って、俺、何ここに居座る気になってんだ??


「おい。」

「ん~・・・・・・・・・何?!」


俺の呼びかけに、奴はその顔を上げることなく返事を返してきた。


「お前、今回のことの一部始終、知っているのか??」

「まあ、ねえ~・・・・・・・・私の場合、ちょっとした蚊帳の外にいるから、その状況が良く見えたよ。」

「で?!そのこと、誰かに進言したのか??」

「うん、そうだね、知っていることは・・・・・・・・・」


奴は、それ以上のことは俺がどんなに聞こうとも「さあ」とか「どうなのかな?!」や「そうなの??」「分かんないなあ」ですっとぼけ通して切り抜けやがった。


ある意味、こいつが一番離れた位置にありながらも、篝家のことを誰よりも熟知し、そして、ある程度(?!)の発言力を備え持っていると思う。


こいつの存在は、瑠依や志信以上にも大きく、そして篝家の誰よりも現会長、そして名誉会長であるその祖父の信頼を寄せている。


だからこそ、こいつはひとり、こうして自由に生きる権利・・・・・と、いうか、勝手気ままな生活を送っていようとも、普段は誰も何も言ってはこなかった。

こいつに関しては、改めて何かを進言しなければならないような事柄は少なく、自活能力も高い。

家の存在が直ぐ近くに無くとも、自身の力で生き抜くことが出来るタイプだ。


根っからのお嬢様ではあるのだが、こいつはお嬢様としては、一風変わったところを備え持っていた。

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