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真昼の月=優しい誘惑3=
「は・・・・・・・・・あっ・・・・・・・・・・・・」その感覚に、声が漏れていた。
声を漏らしながら、私の体がビクンッ、と跳ね上がる。
「あ、やっ・・・・・・・だめっ・・・・・・・・・・・・・!!」
再びその体を覆い被せてきた彼が、私の両手首をシッカリと押さえ込んだまま、その唇を私の首筋に這わせていた。
「くすっ・・・・・・・・・・お前の『だめ』と『いや』は昨夜たっぷりと聞かせてもらった。」
口元で軽く笑みを漏らしながら、匠にいちゃんがそう告げると、その唇で私の唇を少し乱暴に塞いできた。
「ん・・・・・・・ん・・・」
苦しさから、呼吸を補おうとしてほんの少しだけ開いた唇のその隙間から、彼の舌先が侵入し、私の口腔内を念入りに弄っていた。
「ん、・・・・・ん・・・・・・・・・・・」
ちゅくり、ちゅっ・・・・・・・貪るようにしてその唇と口腔内を隅々まで彼の唇、そしてその舌先が触れてくる。
・・・・・・・・・・・・・・・。
そうしながら、体を少し浮き上がらせた彼が、その膝を私の足の間に割り込ませてくる。
でも、今日の私はそれから先のことを彼に許すことが出来なかった。
「ん・・ん・・・・・だ、だめっ!!・・・・匠にいちゃん、やめて!!」
バタバタジタバタと両足をばたつかせ、全身で抵抗をはじめると、そのうちに彼の唇の束縛から逃れることが出来ていた・・・・・・・・・
どちらかというと、彼の方からそれを開放してくれていたような気もする。
「き、昨日はその、そうなっちゃったけど・・・・・・・でも、今日は、もう・・・・・・・・・・だめ。
ごめん、覚悟は・・してた・・・・・・してたけど・・・・・・・でも、だめ、出来ない。
本当に・・・・・・・・ごめん、出来ない・・だから・・・・・・・・・・・」
彼にその手首を掴まれながらも、そう強く・・・・・・・けれど、静かに訴えると、ふ・・・・・・・と、私の体に覆いかぶさっていた彼のその体の重みが消えていた。
「?!」
そのことに気が付いて、逸らしていた視線を彼の方に戻すと、彼はベッドの片隅に腰を下ろし、険しい表情で壁を見つめていた。
「・・・・・・・・・・あの、匠・・・にい・・・・・」
バシッ!!
といった感じに、彼に向かって出しかけていた私のその手を、彼の手によって少し乱暴に振り払われてしまう。
「俺に、触るな。」
口調こそは静かだったけれど、凄みのある口調で言われてしまうと、私は思わずそのまま固まったようになってしまい、動けなくなっていた。
「俺は後から行く、お前は先に行ってろ、行くからには何かと整えておかなければならないことがあるからな、そういった事にお前を巻き込む訳には行かない。
お前は連絡さえすれば、いつでも安全な迎えが来るだろ??
お前の専属SPの総括責任者・・あいつが・・・・・・・・・・確か、昨日辺りお前の親父さんと共にこの日本に帰って来ている筈だ。」
「う、うん。」
彼に向かって私がぎこちなく返事を返すと、彼は私の方を見ることもなく足早に自室を後にしていた。
それが、私が見た彼の最後の姿だった。
以後、私が彼と直接出会うことはなくなってしまっていたから・・・・・・・・・
その役柄上、私と彼とが表立って接することは今後ないもの・・・・・・・と、ある程度覚悟はしていたのだけれど、その時は呆気ないほどにやってきて、そして実行に移されていた。
寂しさを感じないといえば嘘になるけれど、彼にそうするよう、願ったのも結局は私だった。
彼は私が何を望んでいるのか、既に承知していて、それで、それを実行するに当って、最善と思われる方法、道を選ぶとなると、自然とそうなってしまうことはある程度、想像することも出来ていた。
けれど、それと同時に、万が一にも、そうしなくても済むかも知れない・・・・・・といった一縷の望みにかけていた部分もあったのだけれど、どうやらそれは無理な話だったみたい。
「・・・・・・・・・・・・・。」
私は誰もいなくなった室内で携帯を取り出すと、彼の言う人物に連絡をとっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・瑠依。」
間も無く、私は迎えに来た車に乗り、数ヶ月間お世話になったその屋敷を後にすると、懐かしい我が家へと帰る事が出来ていた。
懐かしい我が家の門を潜って玄関に辿り着くと、その入り口の前で志信にいちゃんが落ち着き無く私の帰りを待っていたようだった。
そして、私の姿を確認すると、ほっとしたようにしてコチラに足早に歩み寄って来て、私のその体を強く抱き締めてくれていた。