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真昼の月=優しい誘惑1=
「一緒に、いこ?!」重い瞼を開けば、全ては終わっている筈だった。
だが、目の前には何故か彼女がいて・・・・・・・・・・・
「匠にいちゃん、一緒に行こうよ。」
着替えを済ませた彼女が、ベッドの脇に腰を下ろし、屈託の無い笑顔を見せながらその縁に両手を添えていた。
あ?!何を言っている??
それよりも、なぜ、彼女がここに居るんだ??
「匠にいちゃん。」
俺が何も言葉にすることも無く、ただそこに横になったまま空ろな目で彼女を見ていると、彼女、瑠依は再び屈託の無い笑顔で俺の名を呼んでいた。
「・・・・・・・・・・・・・起きれる?!」
小首を傾げ、俺の表情を伺うその瞳は丸で子ウサギのようでもあり・・・・・・・・
体の自由が利いたのなら、俺は直ぐにでも彼女に向かってその腕を伸ばしていたのかも知れない。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は、彼女の言葉には直接答えることなく、室内を見回す。
「奴」の姿も、気配も感じられない。
どうやら俺の部屋には、俺と、目の前で無防備な笑顔を見せている彼女しか居ないらしい。
「お前、なんで・・・・・・・?!」
少しかすれ気味だが、声を出すことが出来た。
「え、何が?!」
彼女は素っ頓狂な表情で、俺の問い掛けに直ぐに返してきた。
「なんで、ここに居る。」
「え、居ちゃダメ??」
「・・・・・・・そんなんじゃなくて・・・・・・・志信兄貴・・・・・・・・いや、志信はどうした??」
「仕事。」
瑠依がその腰を上げ、ベッドの縁にそれを下ろすと、こちらを見下ろしながらつまらなそうにして言ってきた。
「お前を置いて・・か??」
「うん、そう。なんだか今は私のお兄ちゃんのところに配置されちゃっているみたいで・・・・・・・・・・私の名ばかりの教育係はさっさとお呼びが掛かって、夜も明けないうちに出て行っちゃったよ。」
「・・・・・・・・・・・・・そうか。」
重い体を何とか動かしてみると、それなりに動かすことが可能であった。
俺はその上体をゆっくりと起こし、壁に寄り掛かりながら目の前の彼女の姿を捉える。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺にその姿を正面から見据えられると、彼女は少し恥ずかしそうにしてその視線を逸らしていた。
ほんのりとではあるが、その頬が朱色に染まっているように見える。
「お前、夕べの事、なんとも思っていないのか?!」
直接疑問をぶちあててやると、彼女の体がピクリと軽く跳ね上がったような気がした。
「・・・・・・・・・・・・・そうでも、ないけど・・・・」
少し、困ったような、それでいて今にも泣き出しそうな複雑な表情を浮かべて彼女が答える。
「それで良く、平気で俺に近付いてくるな。」
「・・・・・・・・・・・・・ん、そう・・・・・・・だね。」
俺が煩わしそうにして冷たく言い放つと、彼女は少しだけではあるが、その体を縮こまらせているようにも思えた。
「瑠依、お前、また同じ目にあいたい訳?!それとも、一度やっちゃったら誰とでもOK・・・・・だったりするのか??」
俺は目の前の彼女の頼りない体を力尽くでベッドの上に横たわらせると、その上に身を置くようにして少し低めの声で問い掛けていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・別に、そういうことは、ない・・・・・・・・よ、・・・だって・・・・・・・・匠にいちゃん、私が何を言ったって、なんでそういったことになってしまったのかとか、本当のところは話してくれないでしょ?!・・・・・・だから・・・・・・」
何も知らされていないながらも、彼女自身、疑問に感じる点はいくつか存在しているらしかった。
俺の行動にも疑問を抱いていたってえのか・・・・・・・少し、意外な気がした。
俺ならやりかねない。
そう、思われているのだと・・・・・・・・・・・
戸惑いながらも、俺に組み敷かれた状態のまま彼女が告げてくるその言葉に、俺の動きが止まっていた。
「・・・・・・!!お前、ひょっとして志信兄貴脅して・・・・・・・ってえか、その、絡めとって・・・じゃねえ、兎に角、あいつの性格逆手にとって全部聞き出しやがった・・のか?????」
「だって、他に話してくれそうな人居なかったし・・・・・・・・それに・・・・・・・」
「それに?!なんだ???」
俺の矢継ぎ早な問い掛けに、彼女がその頬を染めて視線を逸らしていた。
「・・・・・・・・・中に、出されちゃったし・・・それで・・・・・・・・・・・」
「そこから色々と上手いこと持っていって、事情を聞きだしたのか??」
「うん。」
「・・・・・・・・・・お前、それで・・・・・・良かったのか?!ってえか、まさか、そこまで話が進んで・・・・いや、その、画策っていうか段取り(?!)行っちゃってるのかよ??中に出された・・・って、それってひょっとしなくても、お前、あいつとの結婚のこととかも射程距離に入ってんじゃねえのか?!」
思わず聞いてしまうと、彼女は寂しそうにして俺の顔を見上げてきた。
「私だって、良く分からない。
だって、誰も本当のこと、教えてくれないし・・・それに、私の意志に関係なく、都合の良い展開だけが進められているみたいで・・それで・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
真っ直ぐに見下ろす俺の視線から逃れるかのようにして、彼女はその目を伏せると、弱々しい声で告げていた。
彼女が本当に何も知らされていないことを、今更ながらに痛感する。
この家に来たのだって、少し違った環境の元で勉強するのもまた学びに繋がる・・とかどうとか上手いこと言われて来たのかも知れねえ。
流石に俺も言葉が出なった。
呆然としながら俺の体の下に居る彼女を見ると、丸で助けを求めるかのようにして、その瞳を潤ませながら俺を見ている。
どうしろってんだ、この状態で・・・・・・・・・・・