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年下の彼5
触れ合っていた唇が、静かに離された。軽く重ね合わされたそれがゆっくりと離れたその時、私はなんだかとろんとした表情をしていたような気がする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そんな私の顔を笑みを湛えながら見下ろした後で、また、彼の顔が近付いてきた。
再び重ね合わされた互いの唇。
それが、さっきよりも強く押し付けられてきて、唇を押し開きながら割り入ってきた彼の舌先が、私のそれに触れてくる。
経験が無くても、それがディープなキスであることくらい、私でも分かる。
触れた彼の舌先が、私のそれを求めるようにして絡みついてきたその動きに合わせて自分のそれも絡み合わせると、それだけでも気持ちが物凄く高揚してきて、私はいつの間にか彼のブレザーの裾を必死になって掴んでいた。
・・・・・・・・・・・そうしている内に、彼がゆっくりとした動きで私の体の向きを直す。
そうする事によって、私の体は彼のその体の向こう側に隠される形になるから、疎らに存在する同じ車両内の人達からは私の姿を確認することが出来なくなっていた。
ちっ・・・・・・・ちゅっ・・・・・・・・・・・・・・・
耳を澄ませば直ぐにでも届きそうな湿った音が、二人の重なり合わされた唇の間から漏れていた。
それでも、そのことが分かっていても、彼と触れ合っているその唇を離すことが物凄く惜しくて、私達は長い間そうしてディープなキスを繰り返していた。
いつの間にか、私の頬に彼の手が添えられていて、彼の服の端を掴んでいた私の手は、彼の腰に廻されていた。
そこに手の平を添えて掴まるようにしていると、とても落ち着くことが出来た。
シッカリとその部分に手の平を添えながらキスを受け続けているその間、私はそれまでに一度も味わったことのない至福感に満たされていた。
人影が疎らとはいえ、走る電車内でのキスは正直言って戸惑いもあった。
けれど、そんな私の気持ちを汲んでくれたのか、私の体を隠すようにして体勢を直してくれた彼の優しさに、思わず涙が零れてしまう。
こんな時に、泣き虫な自分を露呈してしまうことになってしまうとは、思いも寄らなかった。
それまでは、自分が物凄い泣き虫であることなんか忘れるくらいに、楽しくて嬉しい経験ばかりを重ねていたから、彼の前で涙を流したのはこれが初めてだった。
「なんで、泣いてるの?!」
なんて、心配そうな顔をしながら頬を伝った涙を拭おうとして触れてきた彼の指先の温かさに、更に涙が込み上げて来てしまう。
ぽろぽろぽろぽろと悲しくも無いのに溢れ出す涙を、私はどうすることも出来ないまま、黙って彼の顔を見上げ、涙を流し続けていた。
そんな私の状態を、彼は暫く黙って見ていたけれど、そのうち私の二の腕に触れている両手にちょっとだけ力が籠められてきて、そのまま強く引き寄せられると、彼がもう一度、唇を重ねてきた。
今度のキスは、優しく触れるだけだった。
長い時間、離れることなく触れ続けている彼の唇。
その唇に触れていると、それまで過敏過ぎるほどに波立っていた私の気持ちも徐々に落ち着きを取り戻すことが出来るようになっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
どれくらいの間そうしていたのかは分からないけれど、私は気持ちが落ち着いて来た事を彼に伝える為、ゆっくりと重ねられていた唇を離して彼の顔を見上げた。
彼は、何も言わないで私の顔を見下ろしている。
私も、何も言わなかった。
でも、彼を見詰める目が、全てを物語っていたと思う。
そして、今度は私の方からゆっくりと彼に近付き、その唇に自分のそれを重ね合わせていた。
目を閉じる際、少しだけ開いた唇の隙間から、彼の舌が入り込んでくる。
そうしながら、彼はその腕で私の腰を抱え込むと、強引とも思える程の力で私の体を強く抱き締めてきた。
お互いの体をピッタリと密着させたまま、私達は何度も何度も、キスを繰り返していた。