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気まぐれ仔猫12


眩暈が、した。


あの時のことを思い出すと・・・・・・・・・・




だけど・・・・・





「椿、海里・・・だな。」


地の底から響くような重低音が、室内にこだました。

そこに居たのは、見知らぬ男。

一度も見たことの無い、体の大きな・・・・・


その男は、テーブルの前の長座イスにドッカと座り、部屋の戸口に立ち尽くしている私をジッ、と見ていた。

脅すでもなく、怒鳴るでもない。

私とその男以外は、誰も居ないと思われる室内。


その男は、静かに、私の名を告げた後は私の顔を見ているだけで、ただ、座っていた。

ただ、それだけ・・・・・


トン、トン・・・・・・・・・・・・・

「?!」


暫しの間の後、彼が、無言で目の前にあるテーブルの上を軽く指で叩いた。


「この上に、座りな。」


その口調は穏やかだっだ。

けれど、その口調に反して伝わってくるものはとても重たく思えた。

私は、少し緊張した面持ちで、言われた通り、そこに腰を下ろした。

「いい子だ。」

私の行動に、彼は納得したようにして、ひとつ、頷くと、短い言葉を発した。


「今、何年だ?!」

彼は、手にしていたタバコを口元に寄せながら、単発的な問い掛けをしてくる。

「ちゅ、中学2年生。」

「そうか、で、海里。」

男の言葉に、私はそれまで俯かせていた顔を上げる。

男の、真剣な眼差しが、ジッ、と私を見ている。

「お前、その腹の中の子、産むのか?!」

単刀直入に聞かれ、私は力の限り、思い切り良く首を横に振った。


産みたい訳が無い。

ただ、この現状をどうすることも出来ずにいるだけ、友達にも、親にも言えないまま、ただ、ただ、時だけが流れていた。



「分かった。」

彼はまたも短い言葉を発すると、手にしていたタバコの火をもみ消していた。



「海里、下に穿いてるもん、全部、脱ぎな。」

彼の言葉に、私はまだ、その言葉の真意が読みきれずにいた。

「安心しな、痛くはしねえから。」

そう告げたその男は、私の唇に、自分のそれをソッ・・と重ねてきた。


一瞬、ピクリと体が逃げかけた。

だけど・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・」

気がつかないうちに、その男の唇の感触を、受け入れていた自分がいたことに、驚いた。



『嫌』ではなかった。



「自分で、出来るか?!それとも、俺が優しく脱がしてやろうか?」



「・・・・・・・・・・・・・・分からない。」



触れていた唇を離し、私の両膝にその大きな手を乗せた彼の口調は、やはり、静かだった。

静かではあったのだけれど、私は、意見を求めるその男の顔を、まともに見ることが出来なかった。



脱がせて欲しい。



一瞬、言い掛けた言葉を飲み込むと、私は顔一面を真っ赤にしながら俯くより他に、出来ることがなかった。

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