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気まぐれ仔猫Ⅱ・15

白い砂浜。

打ち寄せる小波。



だけど・・・・・・・・・・・・

現実は、夢物語のようには動いてはくれなかった。




「ん、んん、ああん・・・・・・・・・」


テトラポットの陰で、数組のカップルが・・・・・・・・


「はああん、あああ・・・・・・・」

波打つその間際にシートを敷いて、その上でカップルが・・・・・・



はは、ははっははははは・・・・・・・・・・・



なんか、あっちからも、こっちからも、あの声が聞こえてくる。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「なんだ、散歩はしねえのか??」

「うん/////////」


海岸沿いの道路に立ったまま、私の姿を観察(?!)していた彼が、早々に戻ってきた私を見ると、楽しそうにして話しかけてきた。

りゅうちゃん、知っていた・・ね。


「今の時間帯は、この辺りは何処に行ってもこんなもんだ。」

「まだ、お昼前・・だよね??」

「いや、昼は過ぎている筈だ、ランチ後の楽しい営み♪♪ってえ奴だろ。」


ランチ後の営み・・・・・・・・外で??

なんか、一気に疲れた。

そりゃ、さ、私もりゅうちゃんと「えっち♪♪♪」する時はあるけど・・・・・・流石に、この状況では、出来ない・・よ。


とぼとぼとぼと、当ても無く歩き出した私の頭の上に、彼の大きな手の平が添えられてきた。

ぽん、ぽん。

二度ほど、その手の平で、彼が優しく私の頭に触れてくる。


「海里、腹、空かねえか??」

「・・・・・・・・・空いた。」


言われてみれば、確かに・・・・・・・

彼に向かってひとつ頷くと、そんな私達の横を、一台のタクシーが通り過ぎようとしていた。


それを、彼が手を上げて停止を求めたら、タクシーは私達の横を少し通り過ぎた後で停止すると、そのドアが開けられていた。


「近くの駅まで。」

「ここからだと、高菜橋中央が一番近いですが・・」

「そこで良い。」


彼に先に乗るよう促されて乗車すると、彼が行き先を告げながら後から乗り込んできた。


「分かりました。高菜橋中央駅まで・・西口ですか、それとも・・・」

「南口にしてくれ。」

「はい。」


短い会話を終えて、タクシーがゆっくりと目的地に向かって走り出していた。


「海里、何が食いたい??」

「ん~・・・・・・・・美味しいデザートが食べられるとこならどこでもいい。」

「デザート??主食はどうした、何が食いたいんだ?!」

「う~ん、スパゲッティーとか、ドリアとかが食べたい・・かな??」


そんな車内での私達の会話を耳にした運転手さんが、こんなひと言を添えてきた。


「でしたら、シャルルーというお店がお勧めですよ、若い女性に人気のレストランです。」

「だって、りゅうちゃん。」

「ふうん・・じゃあ、そこにするか。」

「うん♪♪」


私が彼の言葉に思い切り良く満面の笑顔付で頷くと、彼がその目を細めながら、私の顔を見下ろしてきた。


「随分と、元気になってきたじゃねえか。」


それだけ告げると彼は、進行方向を向いたまま、ただ、黙って座っていた。

究極のヘビースモーカーな彼なのだけれど、その車内に身を置いている間は、一度もそれを口にすることはなかった。


タクシーを降りて、近くにある喫煙所を見つけ、そこで一服しているその彼の姿が・・・・・・・・・

なんだかとっても可愛く思えてしまったのは、私の気のせいなのかも知れない。


ただ、喫煙所の中に少し風の悪そうなお兄さんがいて、彼に絡みかけていたみたいなのだけれど、彼の軽~い一瞥で、見事に退散していった瞬間を、喫煙所の外からバッチリ目撃してしまいました。

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