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ぼくの家

いつから歩いているのか、どうして歩いているのか。



そして・・・・・・・・・

自分は何者なのか。



それすらも分からないままに、歩き続けていた。




霧のような小雨が降りしきる中、俺はなんの目的もなく、ただ、その本能の赴くがままに歩き続けている。


ガサガサと獣道を進む、4本の足。

長いシッポ。

尖った鼻先に、小さいけれど鋭い牙。


自分が何者であるのか、何故、歩くのか、疑問を抱くことさえもなく、ただ、歩き続けていた。


「!!」

大きくぴんと立ち上がったその耳が、自分以外の存在が近くにあることを捉えていた。


「・・・・・・・・・・・。」

生い茂る草木の間を潜り抜け、その音の主の所へと寄ってみる。

小さな息吹。

今にも、消えかかりそうな・・・・・・・・・・・


小さな、命。


つん、尖った鼻先でその小さな「て」というものに触れてみると、それは冷たく、冷え切っていた。

試しにそこをペロリと舐めてみる。

おししくはなかった。


くんくんふんふんと鼻を鳴らし、そいつの臭いを嗅いでみる。

臭いと共に、そいつの持っている様々な情報が俺の意識の中へと流れ込んでくる。


この山から少し離れた宿に、親と共にやってきたこと。

そして、ひとり、山の中に迷い込み、足を滑らせ、転落したこと。


親の臭い、宿の臭い。

それに・・・・・・・・・・・こいつの、家の臭い。


「・・・・・・・・・・・・。」

気が付いたら、俺はそこに転がっていた小さな息吹を弱々しく吐き出していたそいつと同じ姿に変わっていた。


そこに寝転んでいる小さな命の灯火はいつの間にか、絶えていた。

普通だったら、人はそのようにして姿を掻き消すことはないのだろう。


その小さな灯火の消えたその体は、俺がその姿に変貌を遂げ終えると同時に、周囲に溶け込むかのようにしてその姿を掻き消していた。


そこに残ったのは、そいつが着ていたボロボロ、ドロドロになってしまっている服だけ。

・・・・・・・・・。

俺は、持ち主の居なくなったその服を、自分の身に着せると、とぼとぼと奴がやってきた道を歩き出し、親の待っている宿へと向かっていた。


「晶良。」


俺の姿を見つけるなり、駆け寄ってきて抱き締めてきたのは「母親」という存在だった。


晶良。


それが、俺の名前になった。



月日が流れ、それと同時に、どうしても野生的本能に駆り立てられることがあった。

無性に血と肉とを欲してしまう自分がいることに気付き出していた。

その衝動を抑えることは難しく、人目を忍んでは元の姿に戻り、狩りをしていた時期もあった。

だが、それは大きく「野生」を目覚めさせてしまい、この生活を送る為には不便な部分が多々存在した。


そこで気付いたのが、女。

つまり、♀だった。

そう、メスだ。


小学校高学年ともなると、既に160cm近くにまで伸びきっていた身長に加えて、俺の顔立ちは、年上のお姉さま方からはかなり重宝され、また、♂(オス)として求められることもあった。

小学生相手に、大の大人がその腰を揺さぶり、求めてくる姿は滑稽この上ないものがあったが、それを行い、中に自分の精を放つことによって、俺は自分の中の「野生」を抑制(?!)させることが可能であることに気付いた。


以来、野性的部分がざわめく時は、盛りの時期を迎えた♀を求めて出掛けては、盛った♀の中に己の精を放ち続けていた。

その♀に、俺の種がつくことは決してなかった。

種がつくか、つかないかはその匂いを嗅げば知ることが出来た。



「あの子、本当に晶良なのかしら??」


俺がこの家に来てから間も無くのこと、落ち着きを取り戻した母親が、そんなことを口にしている場面を目にした。

父親に諭され、頷いてはいたが、俺という存在に疑いを抱いているようだった母のそれを拭う為、俺はその母から「晶良」の情報を入手し、その人物を演じることとなった。


俺は、この家が嫌いではなかった。


晶良という人間の姿を理想通りに演じ続けるだけで、この家に居ることが許されるのであるのなら、俺は意に介すことなど何もなかった。

その為、表面上は問題のない人間「晶良」を演じ、野生の本能に駆られるときは、遠く離れた地にまで赴き、その本能のままに精を放ち続けていた。


幸いなことに、俺が♀に不自由することはなかった。


それが、俺の今までの生活パターンだった。

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